労働基準法では、労働契約の締結時や更新時に、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと規定しています。雇用環境の変化を受け、この労働条件の明示に関するルールが、2024年4月より変更になります。以下では、その内容を解説します。
労働契約の締結や更新の際には、その従業員に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示することが義務付けられています。今回、これらの明示が必要な労働条件のうち、「就業場所」と「業務」について、その内容の見直しが行われます。従来、「就業場所」と「業務」については、契約直後の内容を明示すれば足りるとされていましたが、「就業場所・業務の変更の範囲」の明示も必要になります。この変更の範囲については、将来の配置転換などによって変わり得る範囲を明示することが求められます。そのため、労働者に対して、将来の転勤の有無やその範囲、また業務についても職種が限定されているか、限定されていないのかなど、将来的にどのような業務に従事する可能性があるのかも含めて明示することになります。
有期契約労働者については、契約の更新上限の有無と無期転換の申込機会、そして無期転換後の労働条件の明示も必要になります。
有期労働契約を締結する際に、更新上限として、通算契約期間や更新回数の上限を設けている場合には上限を設けている旨と、その内容を明示することになります。なお、設けていない場合はその旨を明示します。上限を設けていない場合であって新たに設ける場合や、例えば更新回数の上限を5 回としていたものを3 回に短縮するような場合には、その理由を労働者にあらかじめ説明することが求められます。
有期労働契約が反復更新されて通算5 年を超えた場合、労働者が会社に申込むことにより無期労働契約に転換できるルールがあります。この無期転換の申込みができる労働者には、契約更新のタイミングごとにその旨を明示することになります。さらに、無期転換後に有期労働契約時の労働条件が変わる場合には、その内容についても、契約更新のタイミングごとに明示が必要になります。
転勤ができない従業員が増加する中、転勤などがない限定正社員制度へのニーズが高まっています。今回の改正はそうした環境変化を受けての内容となっていますが、実務を行う上での詳細については今後、厚生労働省のホームページ等で新たな情報が出てくる予定です。その情報を踏まえて、対応を検討しましょう。
昨年の出生数が80万人を割ったことの衝撃は大きく、今後、出生率改善に向けた様々な政策が行われることになりそうです。ここでは、3月にこども政策担当大臣により取りまとめられた「こども・子育て政策の強化について(試案)–次元の異なる少子化対策の実現に向けて–」の内容を確認します。
厚生労働省が公表した調査結果によると、2021年度の男性の育児休業の取得率は、13.97%という結果になりました。以前はこの取得率を2025年までに30%に引上げる政府目標が示されていましたが、試案では、2025年に50%にするとしており、さらに2030年に2021年度の女性の育児休業取得率相当である85%にするとしています。なお、2023年4月より、従業員数1,000 人超の企業に対し、男性の育児休業の取得率の公表を義務化していますが、この制度の拡充の検討も試案に盛り込まれています。
育児休業を取得し、一定の要件を満たした場合には、育児休業中の所得補償として、雇用保険から育児休業給付が従業員に支給されます。現在の育児休業給付の給付率は支給開始から180日目までが67%、181日目以降は50%ですが、試案では支給開始から28日間の給付率を80%に引上げることが検討されています。80%の給付率は、同給付金が非課税であることや、社会保険料の免除があることを考えると、育休取得前の手取りの100%相当と想定されています。
現在、育児・介護休業法では、所定労働時間を原則6 時間とすることができる育児短時間勤務制度の対象を、3 歳未満の子どもを養育する従業員としています。これに関連し、育児期を通じた柔軟な働き方を推進する目的で、子どもが3 歳以降小学校就学前までの場合において、短時間勤務、テレワーク、出社・退社時刻の調整、休暇など柔軟な働き方を職場に導入するための制度が検討されることになっています。また、「子の看護休暇」についても、子どもの世話を適切に行えるようにする観点から、取得できる子どもの範囲について、現状の小学校就学前までとなっているところ、子どもの年齢や休暇取得事由の範囲などについて検討されることとなっています。
これらの内容は現段階ではあくまでも試案であり、現在、異次元の少子化対策を実施するための財源に関する議論が行われているところです。実際に試案に盛り込まれた内容が運用されることで、企業の育児支援制度にも大きな影響があるでしょう。また、それに伴い、人員確保策の検討が必要になる内容もありますので、今後の検討状況を確認しておくとよいでしょう。
例年、6月から7月末ごろまで社労士事務所では年間で一番の繁忙期となります。
6月1日から7月10日までは労働保険の年度更新期間で、全事業所において労働保険料を確定し、納付しなければならないため、6月中をめどに保険料の申告をしています。
7月は全事業所における社会保険の加入者の保険料見直しのため、社会保険加入者ごとの賃金の申告を行います。その結果、9月から保険料が改定されます。
関与先の皆様には、この時期は申告書類についてのご質問や書類提出のご依頼をさせていただくことになりますが、できる限り早期の申告書提出のため、ご協力いただきますようよろしくお願い申し上げます。
先月号にて、採用時の面接や適性検査を慎重にするための具体的なツールについて、数件ご質問をいただきましたので、弊所利用の「CUBIC」のご案内パンフレットを同封させていただきます。採用後のトラブルを避けるためにも是非、ご検討ください。
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