医療、介護及び販売などの年末年始も休めない会社において、シフトであまり出勤希望者が少ないであろう年末年始に出勤してくれる従業員に対して、「正月手当」や「年末年始手当」といった名目で1日あたり数千円から1万円程度支給するケースが良くありますが、社会保険上のどのように取り扱うかということが議論になります。
12月30日~1月3日 夜勤1回につき4,500円
12月31~1月3日 早出・日勤・遅出1回につき4,000円
賃金規程では、時間外勤務とは別に年末年始手当が設定されている。
年末年始手当が年2回支給
賃金規程では休日出勤による割増賃金と同一条文記載している。
年末年始手当と休日出勤が同一条文に記載されていたとしても、手当が年末年始の勤務の場合にのみ支給され、賃金規程上「年末年始手当」と「休日出勤手当」が分かれており、その支給額の算出方法が異なり、賃金台帳上の記載も別段にされているのであれば、これら手当は同一の性質を有しないと判断され、「年末年始手当」は賞与に該当する。
上記2例のいずれの場合も日本年金機構の見解では、「賞与」として取り扱う旨通達している。よって、年末年始手当を賞与ではなく、1月の賃金と一緒に支給している場合には、賞与支払届漏れを指摘され、保険料を支払う必要があります。なお、従業員からの保険料の半分を事後に回収する必要があるため、調査で指摘された場合には非常に面倒な処理をしなければならないことになります。年末年始手当支払った際に保険料を徴収し、賞与支払届出を出しておくことが賢明です。
いよいよ2023年4月より、中小企業においても1ヶ月60時間を超える時間外労働(法定時間外労働に限る。以下同じ)に対して50%以上の割増賃金率による割増賃金の支払いが求められます。以下では2023 年3月までに必要となる対応についてとり上げます。
割増賃金率は賃金の計算に関する事項として、就業規則に記載が必要です。1ヶ月60時間を超える時間外労働を命じることがあるときは、就業規則を変更しましょう。厚生労働省のモデル就業規則では、以下の規定例になっています。
第〇条 時間外労働に対する割増賃金は、 次の割増賃金率に基づき、 次項の計算方法により支給する。
(1)1か月の時間外労働の時間数に応じた割増賃金率は、次のとおりとする。この場合の 1か月は毎月 1日を起算日とする。
① 時間外労働 60 時間以下・・・・25%
② 時間外労働 60 時間超・・・・・50% (以下、略)
労働時間数を自動的に集計する機能のある勤怠管理システム等を導入している場合は、1ヶ月60時間を超える時間外労働時間数を別途集計する必要が出てきます。勤怠管理システムの設定を確認し、どのタイミングで変更が必要なのか、スケジュールを立てておきましょう。勤怠管理システム等を導入していない場合は、1ヶ月60時間を超える時間外労働時間数の集計もれがないように、集計表に集計欄を追加するなど対応が必要です。また、給与計算システム等も、1ヶ月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%以上で計算されるように設定の変更が必要となります。
今回の割増賃金率の引き上げに対し、割増賃金の計算が正しい内容で行われているかを改めて確認する必要があります。弊所で就業規則の作成や変更の業務の際にも、適切に計算されていないケースは良くあり、再度確認が必要ですので以下にチェックポイントを記載します。
・割増賃金の対象となる賃金が正しいか。
割増賃金の対象となる賃金は法律で除外できるものは決められています。
・分母の所定労働時間制が適切か。
月給の場合は「年間所定労働時間÷12」
・就業規則上と実際の賃金計算に相違はないか。
就業規則に記載されている割増賃金の計算方法と異なる計算方法により計算している。
・給与計算システムの設定が正しいか。
給与計算システムの使用方法が適切ではなく、正しく計算されていない場合があります。
令和2年4月の法改正により、未払賃金の賃金債権の時効が2年から3年に伸びました。実は民法では、原則令和2年4月の改正ですでに賃金債権の時効は原則「5年」となっていますが、当面「3年」になっています。
令和5年4月以降は、賃金債権の時効3年、60時間超の時間外について50%割増となりますので長時間労働での未払賃金がある場合は、かなりのリスクとなることを覚悟しなければなりません。ゆくゆくは賃金債権の時効も5年になることも考えると、勤怠管理と給与計算の適切な運用ができているのか改めて確認していただく必要があると感じます。弊所では本年前半、クライアント企業様に順次リスクの確認をさせていただく取り組みを実施してまいります。
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