正社員と非正規社員の不合理な労働条件の相違を禁止する「同一労働同一賃金」が、令和3年4月1日から、中小企業に対しても義務化されます。
具体的には、諸手当、賞与、退職金等の待遇について不合理な相違があってはならないというものですが、昨年10月に出された最高裁判決では、賞与や退職金について、不支給は不合理とはいえないとの判断が示されたものもあります(大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件)。
上記メトロコマース事件では、原則勤続1年以上の希望者全員が受験できる正社員登用制度があり、原告である契約社員が、試験に2回失敗し断念したことが、企業側は正社員登用の機会を与えていたと判断され、結論に大きく影響したといわれています。
一連の判決を受け、企業の一部には、賞与や退職金について、正社員人材の確保・定着を目的として設けているとして、非正規社員に対して異なる扱いとする代わりに、正社員登用制度を整備する動きも見られます。
キャリアアップ助成金は、雇用期間の定めがある非正規社員の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化等を実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。
本助成金の正社員化コースでは、有期雇用の非正規社員を正社員等に転換、または直接雇用した場合に助成金が支給されますが、限定正社員制度を新設した場合の加算措置があります。具体的には、勤務地限定正社員制度、職務限定正社員制度、短時間正社員制度(令和3年度予算により4月1日から追加予定)が加算対象とされます。
これまで正社員登用制度のなかった企業において、一直線に正社員への登用制度を整備するのは、人件費の面で負担増となることも考えられます。また、在籍中の契約社員やパートタイマーに正社員志望者がいなければ、設ける意味がありません。
優秀な人材を確保したいという企業において、すでに実績がある非正規社員に正社員になってもらうというのは有効な方法の1つですので、上記で紹介した限定正社員制度の導入から始めて、段階的に正社員登用制度の構築を進めてみてはいかがでしょうか。
労災保険は、通常は企業で雇用されている労働者が補償の対象ですが、災害の発生状況の多い個人事業主に対して加入が認められている労災保険特別加入制度があります。現在、中小事業主や建設業の一人親方、農林漁業の従事者、海外派遣者などが特別加入の対象ですが、4月1日からその対象範囲が拡大されることになります。
新たに対象となるのは以下の業種です。
特に芸能従事者は、業務中のケガや事故が多いことから特別加入の対象になるのを強く希望しており、長年の議論によって認められることになりました。厚生労働省によると、これらの3業種の就業者は約29万人いるとされ、約1万5,000人の加入を想定しています。
◆創業支援等措置の対象となる高齢者も加入可能に
また、労災保険特別加入の対象の拡大は、4月1日施行の高年齢者雇用安定法改正によって新設された創業支援等措置の対象者にも適用されることになります。
創業支援等措置は、65歳から70歳までの労働者の就業機会を確保するための高齢者就業確保措置(努力義務)の1つで、雇用によらない措置のため、企業は高齢者との業務委託契約を締結する必要があります。また、措置の実施に関する計画書の作成や、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の同意が必要となります。
◆補償を受けるには?
労災保険特別加入制度では、それぞれの業種の対象者によって組織される特別加入団体(中小事業主の場合は事務処理を委託する労働保険事務組合)に加入し、その団体(または事務組合)を通じて所轄の労働基準監督署に手続きを行うことで補償を受けることができます。したがって、今回新たに加わった業種の加入希望者や高齢者は、既存の特別加入団体に加入または新たに団体を設立する必要があります。
今回は宣伝みたいになってしまいますが・・・。
先月より、クラウド会計ソフトの最大手freeeの人事労務管理ソフト「人事労務freee」のホームページでの記事監修をすることになりました。
現在、「アルバイト・パートの有給休暇の計算方法」及び「社会保険の加入条件・加入手続き方法・必要書類をまとめて解説」の2記事です。今後毎月増えていきますので、弊所ホームページからリンクしておりますので、是非ご覧いただけければ幸いです。
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