事務所便り

令和2年7月号

年金制度改正法が成立しました!

年金制度改正法(年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が5月 29 日、第 201回通常国会において成立しました。この改正は、人手不足の進行や健康寿命の延伸、高齢者や女性の就業促進といった今後の社会・経済の変化を年金制度に反映し、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図ることを目的としています。

主な改正内容を紹介いたします。

被用者保険の適用拡大(2022 年 10 月~)

短時間労働者(週の労働時間が通常の労働者の 3/4 以上)を厚生年金保険、健康保険の被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件が段階的に引き下げられます(現在は 500 人超→2022 年 10 月 100 人超→2024 年 10 月 50 人超)。

在職中の年金受給の在り方の見直し(2022 年4月施行)

① 在職中の老齢厚生年金受給者 65 歳以上の方については、在職中であっても年金額の改定を毎年定時に行うようになります。現状、老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合は、資格喪失時(退職時・70 歳到達時)に、受給権取得後の被保険者であった期間を加えて、老齢厚生年金の額を改定していますが、退職を待たずに早期に年金額に反映します。

② 60 歳から 64 歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の 28 万円から 47 万円に引き上げます。

受給開始時期の選択肢の拡大(2022 年4月施行)

現在、60 歳から 70 歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、60 歳から 75 歳の間に拡大します。

確定拠出年金の加入可能要件の見直し等(2022 年4月施行)

① 確定拠出年金(DC)の加入可能年齢の引上げ
・企業型DC:現行 65 歳未満→厚生年金被保険者(70 歳未満)に改正
・個人型DC(iDeCo):現行、国民年金被保険者の資格を有し、かつ 60 歳未満→国民年金被保険者に改正

② 確定拠出年金(DC)の受給開始時期の選択肢の拡大

現行は 60 歳から 70 歳の間で各個人において受給開始時期を選択できますが、公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大に合わせて、上限年齢を 75 歳に引き上げます。

その他の改正

国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え(2022 年4月)、未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等に追加(2021 年4月)、短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ(2021 年4月)などが予定されています。

テレワークの流れを止めない ―今後企業が重視すること

流れを読めていますか?

職種柄、どうしても実際に職場に出てくることが必要な仕事というものもありますが、テレワークやウェブ環境を通じた働き方は、今後もより一層浸透していくことでしょう。

しかし、今回のコロナ禍を機にテレワークを導入し始めた企業では、緊急事態宣言の解除とともに、何となく(あるいはそそくさと)旧来の働き方に戻ろうとの空気が漂い始めているのではないでしょうか。そのような新しい流れに対応できない企業は、人材採用の面でも「テレワークすらとり組めていない企業なんて……」と、就職先の候補から外されてしまうことも起こるはずです。

テレワークのメリット?

テレワークに、会社に対する直接的なメリットを求める企業もあるようですが、それは少し認識がずれている可能性があります。人生 100 年時代、70 歳までの雇用確保等に向けて世の中が動き始めています。年齢・性別にかかわりなく活躍してもらわなければ企業が生き残っていけない時代に、すでに差しかかっています。(独)労働政策研究・研修機構が行った「人生 100 年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査」を見ても、日本企業の雇用管理と長期勤続化の課題として、働きやすい職場の実現に対する配慮を重視されています。

つまり、「ワーク・ライフ・バランスの向上」、「育児・介護や病気治療と仕事の両立」、「社員のストレスの削減」等が重視される時代なのです。いろいろな社員が活躍できるようにすることが、回りまわって企業のメリットとなるのです。今後の社会において、社員の働きがいを考えられない企業は生き残れるでしょうか?

また、BCP対策や企業イメージの向上につながるテレワークは、会社として重要なメリットであるはずです。

試行錯誤してこそ

現在、多くの企業が試行錯誤しながらテレワークの活用を模索しているところです。労働時間や業績の管理、評価方法、通勤手当の見直し、在宅勤務手当の検討、ツールの使い方といった試行錯誤を経験してこそ、仕事の効率化・スキルの向上や新しい事業の創造につながるのですから、そこに背を向けることは企業の自殺行為に等しいことでしょう。

何事につけ、「どうしたらうまく活用できるか」を自律的に考えられる場や雰囲気を社内に作り出すことが、企業には求められているでしょう。

労働政策研究・研修機構「人生 100 年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査」

弊所よりひと言

数年前に一度、仕事の依頼を受けたお客様から電話がかかってきました。内容は、元請工事の現場で、下請会社から依頼を受けた一人親方が事故で亡くなられたとのことでした。工務店や建設会社では、よく一人親方と言われる方が下請や孫請として現場で仕事をしております。

しかし一人親方は名ばかりの実態は雇用契約というケースが多い、いやほとんどなのかもしれません。実態が労働者と認定された場合のリスクは計り知れませんので、建設会社の方は是非、自社の点検をして確認をしてください。

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