事務所便り

令和7年3月号

レピュテーションリスクとは

 レピュテーションとは、「評判、風評」を意味する言葉です。つまりレピュテーションリスクとは、企業の評判が損なわれることによって生じる経営リスクのことを指します。特に労務管理においては、労働環境の問題や不適切な人事対応が企業の信用を大きく左右します。近年では、ハラスメント問題や労働時間管理の不備がメディアで報道され、企業のブランド価値を大きく損なうケースが増えています。また、SNSの普及により、企業の労務管理の問題が瞬時に拡散される時代となっています。

■ レピュテーションリスクと労務管理の関係

労務管理に関する問題は、企業の評判を大きく左右する要因の一つです。以下のようなケースがレピュテーションリスクにつながります。
  ① ハラスメント問題:セクハラ、パワハラ、マタハラなどの発生と対応不備
  ② 過重労働・長時間労働:労働基準法違反や過労死事案の発生
  ③ 不当解雇・雇い止め:労働契約の適正管理ができていないことによる訴訟リスク
  ④ 労働組合との対立:団体交渉や労働争議の長期化
  ⑤ 採用・雇用の問題:多様性(ダイバーシティ)を軽視した採用方針やSNSでの不適切発言
  ⑥ SNSやインターネット上の炎上:元従業員による内部告発やブラック企業認定
 昨年あった複数の市区町村長のパワハラでの辞任や数年前にあった有名なロールケーキの製菓店での長時間労働による労働基準法違反とその後の時間外労働における損害賠償請求訴訟など事例はいくらでもあります。

■ 労務管理におけるレピュテーションリスクの影響

  ① 企業の信頼失墜:労働問題が発覚すると、企業ブランドや採用活動に大きな悪影響を及ぼす。特に採用難の時代においては、新規採用に多大な影響があると言われている
  ② 従業員の士気低下:適切な労務管理が行われないと、社内のモチベーションが低下し生産性が下がる
  ③ 行政指導・法的リスク:労基署からの是正勧告や訴訟による損害賠償責任の発生
  ④ 投資家・取引先からの信用低下:ESG経営の観点からも労務管理の適正化が求められる

■ レピュテーションリスクの管理と防止策(労務管理の視点)

 (1) 予防策
  ① 労働環境の整備:適正な労働時間管理とメンタルヘルス対策の強化
  ② ハラスメント対策の徹底:相談窓口の設置と研修の実施
  ③ 人事評価・処遇の透明性向上:公平な評価制度とキャリアパスの明確化
  ④ 従業員エンゲージメントの向上:定期的な満足度調査とフィードバックの実施
  ⑤ コンプライアンス研修の強化:管理職向けに特化したリスク管理の研修を実施
  ⑥ SNSリスク管理:従業員の投稿ルールの策定と周知徹底
 (2) 問題発生時の対応
  ① 迅速な対応と説明責任の遂行:問題が発生した際には速やかに調査し、公正な対応を取る
  ② 従業員との信頼関係の構築:別の問題が派生するのを防ぐため、組織内の対話を促進
  ③ 外部専門家の活用:弁護士や社労士との連携を強化し、適切なリスク対応を実施
  ④ 危機管理対応マニュアルの整備:迅速かつ適切な対応ができる体制を確立する
  ⑤ 社内通報制度の活用:従業員が安心して問題を報告できる環境を整備

■ レピュテーションリスクを低減する組織文化の構築

  ① 心理的安全性の確保:従業員が安心して意見を言える職場環境を整える
  ② オープンなコミュニケーション:トップダウンではなくボトムアップの意見も反映する企業文化を育てる
  ③ エシカル(倫理的)な経営方針の推進:法令順守だけでなく、社会的責任を果たす経営を行う
  ④ 多様性の受容とダイバーシティ推進:多様な価値観を尊重することで、より強固な組織を構築

■ 経営者・経営幹部の役割

経営トップが労務管理におけるリスクを正しく認識し、以下の点に注力する必要があります。

  ① コンプライアンス経営の推進:適正な労務管理が企業価値向上につながることを全社で共有
  ② 労働環境の継続的な改善:従業員の声を反映した制度設計と環境整備
  ③ 積極的な情報開示:社内外に向けた透明性の高い労務管理方針の発信
  ④ 経営陣の率先垂範:経営幹部自身が労務管理の模範となる行動をとることが重要

■ まとめ

 レピュテーションリスクと労務管理は密接に関連しており、企業の持続的成長にとって重要な課題です。適切な予防策と迅速な対応を徹底することで、企業の信用を守り、競争力のある組織を構築することが求められます。特に、SNSを含めた情報拡散の速さを考慮し、労務管理の適正化とリスク対応体制の強化が不可欠です。経営者・経営幹部は、労務管理の観点からもリスクマネジメントを最優先事項として取り組み、長期的な企業価値の向上を図る必要があります。

弊所よりひと言

 毎月のニュースレターをお読みいただきありがとうございます。
 当初は、ニュースに対する反応もなく、作成していても読んでくれているのかな・・・と思いながらも10年以上続けてきました。
 最近では、36協定の締結時期にご案内したとき、「この前のニュースレター見たけど、労働者代表って〇〇さんにお願いしてたけど、それじゃああかんのやね~。どうやって選ぶの?」と言った質問を受けたり、育児介護休業法の法改正のご案内を送ると、「ニュースレター見たので、就業規則の変更お願いできますか。」とご連絡いただいたり嬉しい反応が増えています。
 4月以降も新年度の助成金情報など皆様に有益な情報を発信してまいりますので、お読みいただけますと幸いです。

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