事務所便り

令和6年8月号

2025年4月に創設される「共働き・共育て」のための給付金

■ 出生後休業支援給付金の創設

 育児休業を取得すると、従業員(雇用保険の被保険者)は所得の補てんとして育児休業給付を受け取ることができますが、育児休業を取得せずに給与を受け取ることと比較し、手取額が低くなります。このように手取額が低くなることが、男性の育児休業の取得が進まない理由の一つと言われています。その解消を目的として、子どもの出生直後の一定期間以内に、両親ともに14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額が「出生後休業支援給付金」として支給されることになります。この給付金に、出生時育児休業給付金または育児休業給付金をあわせると、給付率が80%となり、手取りとしては10割相当が支給されることになります。 
 なお、一定期間とは、男性が子どもの出生後8週間以内、女性が産後休業後8週間以内です。従業員の中には、配偶者が専業主婦(夫)であったり、ひとり親として育児をしていたりすることもあるため、このようなケースでは、配偶者が育児休業を取得していない場合であっても、出生後休業支援給付金が支給されます。


■ 育児時短就業給付金の創設

 育児休業中の支援の他に、2歳に満たない子どもを養育するために、時短勤務をすることで給与額が下がる場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を上限に支給される「育児時短就業給付金」が創設されました。この給付金は、単に時短勤務を推奨するものではなく、育児休業よりも時短勤務を、さらには時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する目的で創設されており、これを前提に10%という給付率が決められています。なお、時短後に支給される賃金と給付金の合計額が時短前の賃金を超えないように給付率を調整する仕組みとなっています。

 出生後休業支援給付金の創設により、出生時育児休業(産後8週間以内に4週間を上限として2回に分けて取得できる休業)の申出の増加が予想されます。また、これまで育児の時短勤務は女性従業員の利用が中心でしたが、今後は男性従業員の活用も増えてくることも予想されます。今後の申請方法や、それに沿った社内の手続きの流れを確認する必要があります。


「人手不足倒産」過去最多ペースで増加

 帝国データバンクが、2024年上半期における「人手不足倒産」の件数を公表しました。2023年上半期の110件を大きく上回る182件もの「人手不足倒産」が発生しており、過去最多ペースで推移しています。
 ※「人手不足倒産」とは、法的整理(倒産)となった企業のうち、従業員の離職や採用難等により人手を確保できなかったことが要因となった倒産のことをいいます。


■ 倒産件数の8割が「従業員10人未満」

 2024年上半期における「人手不足倒産」182件のうち、「従業員10人未満」の小規模事業者の割合は8割を占めています。厚生労働省の労働力調査(2024年5月)によれば、就業者数は22カ月連続で増加しており、人手不足感は落ち着きつつあるものの、1人の退職者が与えるダメージが大きい小規模事業者では、依然として「人手不足倒産」に追い込まれる可能性は高いと予測されています。


■ 「2024年問題」の影響も

 物流業や建設業においては、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が2024 年4月から適用されたことによる人手不足(いわゆる「2024年問題」)の影響があり、倒産件数は、建設業で53件、物流業で27件となっており、どちらも年上半期としては過去最多でした。特に物流業では、時間外労働上限規制や改善基準告示が改正されたことにより、2023年上半期の15件と比較してほぼ倍増となっています。
 1人が退職すると、残された社員でその穴を埋めることとなり、負荷に耐えきれずドミノ倒し型に退職が連鎖するケースも多いようです。これからますます人手不足が深刻になることが予想されるなか、採用の強化や、労働条件の改善による離職防止など、各会社が本気で対策を実施しなければ、人材不足により経営を継続することが難しくなるでしょう。
 【帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年上半期)」】

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