事務所便り

令和6年6月号

求められる同一労働同一賃金への対応の遵守

 同一労働同一賃金の対応を求める改正パートタイム・有期雇用労働法が全面施行されて3 年が経過しました。施行のタイミングで各種待遇の見直しを実施した企業もあれば、検討が進んでいない企業もあるかと思います。今年度(令和6 年度)、労働行政において同一労働同一賃金の遵守徹底を図る動きがあることから、徹底が求められる事項と、企業に求められる対応をとり上げます。

■ 地方労働行政運営方針

 厚生労働省は毎年、地方労働行政運営方針(以下、「運営方針」という)を策定しており、今年も、令和6 年度版が公表されています。この運営方針の中で、同一労働同一賃金の遵守の徹底という方針が掲げられています。具体的には、労働基準監督署の定期監督の際に、パートタイマー・有期雇用労働者などの待遇の確認を実施し、その結果をふまえて、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が報告徴収または指導監督を行い、是正指導の実効性を高めるとしています。また、基本給・賞与について、正社員との待遇差があり、その理由の説明が不十分な場合、労働基準監督署から点検要請を集中的に実施するなどして、企業の自主的な取り組みを促すとしています。今回の方針は、本来であれば都道府県労働局がパートタイム・有期雇用労働法等を扱うところ、労働基準監督署において同一労働同一賃金に関する相談をする労働者も多いことから、労働基準監督署でも対応をすることとして示されたものです。

■ 求められる企業の取り組み

 同一労働同一賃金への対応が十分にできているかを確認するため、以下の①~③に沿って点検してみましょう。

   ①  パートタイマー・有期雇用労働者はいるか。
   ②  ①でいる場合、正社員とパートタイマー・有期雇用労働者の待遇(※)に違いはあるか。
     ※待遇とは、賃金(手当・賞与を含む)・福利厚生などのあらゆる待遇をいう。
   ③  ②で待遇に違いがある場合、待遇の違いが働き方や役割の違いに応じたものであると説明できるか。

 ③で説明ができない場合、待遇の違いが不合理であると判断される可能性があるため、不合理な待遇の違いの改善に向けて取り組みが求められます。なお、待遇差が不合理か否か、説明の方法や内容が適切であるか否かについては、最終的に司法により判断されます。

 パートタイマー・有期雇用労働者などの処遇改善の取り組みを行う企業を支援するものとして、キャリアアップ助成金が設けられています。この助成金は、中小企業だけでなく大企業も対象とされています。受給のためには、取り組み実施日の前日までにキャリアアップ計画の作成・提出が求められます。待遇の見直しと併せて助成金の活用を検討される場合は、助成金の内容についても目を通しておくとよいでしょう。

採用して2か月後に適応障害となった社員への対応

 最近、労務相談であった内容から皆様に参考になる事例を取り上げます。
 【事例】正社員として採用して2か月後に職場に慣れなくて心療内科に行ったところ、「適応障害」により療養1か月の診断を受けたため、休ませてほしいと会社に相談がありました。さて、皆さんの会社ではどのような対応をされますか。

■ 就業規則及び契約書の確認

 まずは、診断書の提出を求めたうえで、就業規則、契約書を確認します。
上記事例の会社では就業規則は作成していましたが、なんと他社の就業規則をもらってきてそのまま会社名だけ変えて利用していました。
 就業規則の休職規程では、「私傷病による欠勤が3か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないと認められたときは休職期間を最大1年間与える。」と記載されていました。

 上記就業規則では、欠勤3か月を超えて初めて休職となるため現状としては、休職期間とすることはできません。また、試用期間については休職規程を適用外とする規定もありませんでした。会社規模が20名程度の会社で休職期間はやや長いように思われますが、これも他社の就業規則をそのまま利用し、十分に検討されずに作成されたからだと思います。

■ 試用期間の確認

 事例の会社では就業規則において試用期間が3か月と規定されていましたが、雇用契約書で試用期間の明記がありませんでした。よって、試用期間のある雇用契約があったと言えず、このまま適応障害が継続していた場合において、試用期間終了後の本採用を拒否することもできません。
 以上から、欠勤として当面1か月認めるだけの対応しかできないことになります。また、1か月後に適応障害が継続していた場合、さらに欠勤が続くことになります。その後、継続していれば休職発令となり、休職期間で最大1年間ということが想定されます。

■ 改めて自社の就業規則や契約書など確認を!

 自社の就業規則や雇用契約書が上記事例のような場合にどのような制度になっているのか是非確認してみてください。確認ポイントは以下のとおりです。
 ・就業規則の休職規程で休職発令できる期間や休職期間が自社の規模や社会通念から検討して適切か
 ・試用期間中においては、休職期間は適用外としているか
 ・雇用契約書で試用期間を設定する場合に明記しているか
 ・入社時にメンタルヘルス等疾患だけではなく仕事をするうえで何か支障がないか確認をしているか

弊所よりひと言

 6月より「定額減税」の制度がスタートします。皆様の会社では準備はできていますか。
 先月にようやく弊所の利用している「社労夢」、「オフィスステーション」、「freee 人事労務」等のシステム会社の対応が出そろったため、定額減税の説明や対応方法についてクライアント様にご案内をしております。
 同時に住民税も定額減税一人当たり1万円の控除するとともに、原則的には7月分から住民税の控除が始まるのですが、これがまた厄介です。これまでは6月と7月以降の2か所のみ住民税の金額を入力すれば良かったのですが、今回の対応で入力項目が増えました。ほんとに定額減税で仕事を増やしてくれますね・・・と文句を言いたいところです。
 6月からは労働保険の年度更新の手続きが始まります。弊所では1年で一番と言っていいくらい忙しい時期になります。速やかに申請手続きをしてまいりたいと思いますので、クライアントの皆様にはご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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