2024 年4 月より、労働条件の明示に関して、就業場所・業務の変更の範囲の明示が必要になります(前号にてご案内しております)。また、この変更点以外にも有期労働契約では更新上限と無期転換に関する事項も変更になります。以下ではこの内容をとり上げます。
有期労働契約を締結する際には、契約更新の有無と「更新する場合がある」と明示したときには、その判断基準を明示する必要があります。2024 年4 月より、これに加えて、更新上限の定めがある場合には、例えば「通算5 年まで」や「更新3 回まで」のようにその内容を明示することが義務となります。
また、更新上限を定めていなかったにもかかわらず、その後に新たに「通算5 年まで」と更新上限を設定する場合や、「更新5 回まで」としていたものを「更新3 回まで」のように短縮する場合は、その理由をあらかじめ対象となる従業員に説明することが必要になります。なお、更新上限を定めない場合は、明示の必要はありませんが、契約内容を明確にするという観点からは、更新上限がないことを明示することが望ましいでしょう。
有期労働契約が反復更新されて通算5 年を超える契約を締結すると、従業員は無期転換の申込をすることができます。2024 年4 月からは、対象となる従業員に無期転換の申込ができることを労働条件通知書で明示し、さらに、無期転換後に有期労働契約時の労働条件から変わる場合には、その内容も明示することになります。なお、その内容については別紙を添付するなどして明示することも認められています。これらの内容に係る労働条件通知書の記載例は以下のとおりです。
【記載例】本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをすることにより、本契約期間の末日の翌日(〇〇年〇月〇日)から、無期労働契約での雇用に転換することができる。この場合の本契約からの労働条件の変更の有無( 無 ・ 有(別紙のとおり))
この無期転換に関する明示は、無期転換の申込ができる有期契約労働者が対象になります。有期契約労働者全員が対象になる訳ではないため、有期労働契約が通算5年を超えているか否かの管理が必要です。この際、無期転換への申込を行う意思はないと表明している従業員に対しても、この明示は必要です。
会社には正社員やパートタイマー、嘱託社員など様々な雇用形態の方がいるかと思いますので、今回の変更となる有期契約労働者に対する明示事項と、就業場所・業務の変更の範囲について、それぞれ必要となる事項を労働条件通知書のひな形に反映しておきましょう。
2024 年4 月より、無期転換の申込ができる有期契約労働者に対して、無期転換の申込ができること等を労働条件通知書で明示することが求められます。以下では、無期転換ルールと定年再雇用者の取扱いについて改めて確認します。
無期転換ルールとは、同一の会社との間で、有期労働契約が反復更新されて通算5 年を超えた場合、従業員からの申込により、次の契約から無期労働契約に転換できるというものです。
労働契約期間が1 年の場合、5回目の更新後に無期転換申込権が発生し、無期転換の申込をすることができます。従業員がこの無期転換の申込をした場合、会社は無期転換することを断ることはできません。
この無期転換は非正規労働者を正社員にするものではなく、あくまで契約期間が有期から無期に変わることを意味しています。そのため、無期転換後の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、就業規則や個々の労働契約等に別段の定めがなければ、従前の内容(有期労働契約の内容)と同じとなります。例えば労働日や労働時間について、1日4 時間、週3日勤務という有期労働契約であれば、この労働日数や労働時間数のままとなります。
定年後の再雇用の契約は、有期労働とすることもあります。有期労働契約には、このような定年後に再雇用する従業員も含まれます。この定年後に再雇用した従業員については、労働局に申請をして認定を受けることで、有期労働契約が通算5 年を超えたとしても無期転換申込権が発生しない、という特例が認められています。この認定を受けた後は、定年後に再雇用した従業員の労働条件通知書に、定年後引き続いて雇用されている期間については無期転換申込権が発生しない旨を記載しておき、対象となる従業員に無期転換の申込ができないことを理解してもらうことも必要です。
労働局の認定を受けていない場合は、定年後に再雇用した従業員も、有期労働契約が通算5 年を超えると、原則通り、無期転換の申込ができることになります。この場合、2024 年4月から変更される労働条件の明示事項に関して、無期転換の申込ができること等を労働条件通知書に明示する必要が出てきます。労働局の認定が必要か否かを検討し、認定を受ける場合は準備を進めましょう。
本年も引き続き、有益な情報が発信して参りたいと存じます。
最近の労務相談の傾向について。最近は、解雇リスクについても中小企業で浸透しておりますので、解雇してからご相談される方はさすがにいなくなりました。近年は、解雇できないような「問題社員」への対応についてのご相談が圧倒的に増えています。問題社員といっても、①能力不足 ②勤務態度不良、協調性なしのどちらか又は両方のパターンです。また、ここ数年は「パワハラ」、「セクハラ」などのハラスメント相談、メンタルヘルス不調社員への対応相談といった事案が明らかに増えています。いずれにしましても、何か事案があった場合、初期対応がとても重要ですので、お早めにご相談いただけますと幸いです。
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