事務所便り

令和5年12月号

2024年4月から変わる就業場所・業務の変更の範囲の明示ルール

 労働契約の締結の際や有期労働契約の更新のタイミングごとに、すべての労働者に対し労働条件を明示する必要があります。明示事項である「就業場所」と「業務の内容」は、現在は雇入れ直後のものを明示すれば足りるとされていますが、2024年4月1日以降は、これらに加えて「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要です。

■ 記載方法

 今回追加となる「就業場所・業務の変更の範囲」とは、雇入れ後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の範囲のことを指します。そのため、将来の可能性も含めたうえで、その範囲を明示することになりますが、就業場所・業務がどの程度限定されるかによって、記載方法が変わります。記載例は以下のとおりです。

① 就業場所・業務に限定がない場合
   ・就業場所 
    (雇入れ直後)〇〇営業所 (変更の範囲)会社の定める営業所
   ・従事すべき業務
    (雇入れ直後)〇〇に関する業務 (変更の範囲)会社の定める業務
②  就業場所・業務の一部に限定がある場合
   ・就業場所
    (雇入れ直後)〇〇営業所  (変更の範囲)◇◇県内の営業所
   ・従事すべき業務
    (雇入れ直後)〇〇企画業務  (変更の範囲)本社における〇〇 または△△の企画業務
③  就業場所や業務の変更が想定されない場合
   ・就業場所
    (雇入れ直後)〇〇営業所  (変更の範囲)〇〇営業所
   ・従事すべき業務
    (雇入れ直後)〇〇企画業務  (変更の範囲)〇〇企画業務

 いわゆる総合職については通常、①の「就業場所・業務に限定がない場合」に該当するかと思いますが、「会社の定める営業所」および「会社の定める業務」と記載するほか、変更の範囲を一覧表として添付することも考えられます。 後になってトラブルとならないように、できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明らかにし、会社と従業員とで共通認識を持つことが求められます。

■ 適用のタイミング

 今回の改正は、2024年4月1日以降に締結される労働契約から適用されます。そのため、2024年4月1日以降に入社する従業員について、2024年3月31日以前に労働条件を明示する場合には改正前のルールが適用され、新たなルールでの明示は不要です。なお、従業員の理解を深めるために、2024年3月31日以前から新たなルールで明示することは望ましい取組みとされています。 早めにどのように記載する必要があるのかを確認し、労働条件通知書のひな形を直しておきましょう。
 今回の変更に伴って厚生労働省から出されたモデル労働条件通知書に、「就業規則を確認できる場所や方法」の欄が追加されました。これは労働基準法施行規則の改正に基づくものではなく、行政通達の改正に基づくものであり、就業規則を備え付けている場所を示すことで、従業員が容易に就業規則を確認できる状態にしたいということが背景にあります。

「50人の壁」とメンタルヘルス不調者の増加

■ 「50人の壁」とは

 「50人の壁」とは、社員数が50人を超えると発生する経営課題のことを指しています。マネジメントを行うために社長のほか複数の管理職が必要となり、人事制度も複雑化するので管理レベルも高まるタイミングです。また、社員数が増えることで、情報共有や意思疎通が難しくなるため、組織内のコミュニケーションの質が低下するともされています。
この50人の壁と符合するように、メンタルヘルス不調者の割合が高まってくるようです。

■ メンタルヘルス不調者がいる企業は社員数50人超で大きく増加

 帝国データバンクが行った「健康経営への取り組みに対する企業の意識調査」では、過去1年間で「過重労働時間となる労働者」や「メンタルヘルスが不調となる労働者」がいるかどうかを尋ねたところ、次のような結果が出ています。この調査の有効回答企業数は1万1,039社ですので、わが国での一般的な傾向と考えられます。
   <社員数とメンタルヘルス不調者がいる割合(%)>
     ・5人以下 …………… 5.0%
     ・6人~20人…………10.8%
     ・21人~ 50人………19.5%
     ・51人~ 100人 ……31.6%★
     ・101人~300人 ……45.5%
     ・301人~1,000人 …59.0%
     ・1,000人超 …………62.0%
     (全体集計では、21.0%[5社に1社]が「いる」と回答)
 このように、規模が大きな会社ほど割合が高まっており、50人を超えたところで全体での数値を超えている状況がわかります。
 会社が大きく成長するほど、人事労務管理の重要性も高まってきます。メンタルヘルス不調を防止するためには、定期健康診断の確実な実施、職場の喫煙対策、労働時間管理や仕事の進め方の見直しなどによる労働密度の適正化などが重要ですので、今一度、自社の状況を見直してみましょう。
 【帝国データバンク「健康経営への取り組みに対する企業の意識調査」】
  https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p231011.pdf

弊所よりひと言

 本年8月に実施されました社会保険労務士試験において、弊所の松本が3回目のチャレンジで見事合格致しました。弊所に入所以来、業務と勉強の両立を図りながら、努力を続けてきた結果であり、職員一同とてもうれしい限りです。
 令和6年1月より兵庫県社会保険労務士会に会員登録し、社会保険労務士として活動して参ります。
 まだまだ未熟ではございますが、皆様のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

【松本よりひと言】
 平素より大変お世話になっております。社会保険労務士法人ウィズロムの松本でございます。
 この度、令和5年度社会保険労務士試験に合格することができました。 
 資格者にはなれましたが、専門家としてはまだまだ駆け出しの身でございます。
 今後もクライアントの皆様のお役に立てるよう日々精進してゆく所存でございますので、
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

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