社会保険には、①年収106万円以上で、健康保険・厚生年金保険に加入することから、社会保険料の負担を避けて就業調整をするいわゆる「106万円の壁」と、②年収130 万円以上で、国民年金・国民健康保険に加入することから、社会保険料の負担を避けて就業調整をするいわゆる「130万円の壁」があります。9月下旬、厚生労働省からこれらの壁を意識せずに働くことのできる環境づくりを後押しするための施策「年収の壁・支援強化パッケージ」が公表されました。
① キャリアアアップ助成金の変更
現在あるキャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されることとなりました。このコースは、短時間労働者が社会保険の加入により手取り収入が減少することを意識せず働けるよう、従業員の収入を増加させる取組みを行った会社に対して、従業員1人当たり最大50万円の支援を行うものとなっています。なお、実施に当たっては、支給申請の事務が簡素化される予定です。 また、従業員の収入を増加させる取組みとしては、賃金の引上げや所定労働時間の延長が考えられますが、これらのほか、社会保険の適用に伴う社会保険料の負担を軽減するために「社会保険適用促進手当」を支給する場合も、助成金の支給対象にするとしています。公布は2023年10月下旬が予定されており、地域別最低賃金の最も早い発効日である 2023年10月1日に遡及して適用されることになっています。
② 社会保険適用促進手当
この「社会保険適用促進手当」については、 新たに発生した本人負担分の社会保険料相当額を上限として、従業員の標準報酬月額・標準賞与額の決定の際には考慮しない取扱いとなります。この取扱いの適用は最大2年間とされています。対象は標準報酬月額が10 万4 千円以下の従業員に限られる予定です。
被扶養者の認定の基準の1つに「年収130 万円未満であること」があります。この被扶養者の認定基準について、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入の変動によるときは、その旨を会社の証明を添付することにより迅速で円滑な判断ができるように変更されます。あくまでも一時的な事情のため、同一の従業員について原則として連続2回を上限とされる予定です。
このほか、特に中小企業において、配偶者手当の見直しを後押しするために、見直しの手順をフローチャートで示す等のわかりやすい資料を作成・公表するといった対応も図られることになっています。詳細は今後示されることになりますので、厚生労働省のホームページで確認するとよいでしょう。
始業時刻前や終業時刻後に自主勉強会のような形で研修を実施することがありますが、後になってそれが労働時間に該当するのか否か、トラブルになるケースが見受けられます。以下では、労働時間の考え方とトラブルを未然に防止するためのポイントを確認します。
そもそも労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。使用者が明示の指示をしていない場合であっても、 黙示の指示により労働者が業務に従事している時間は労働時間に該当します。
研修については、参加するように業務命令が出ている場合は、労働時間に該当します。反対に、参加するように業務命令が出ておらず、自由参加のものであれば労働時間には該当しないとされています。このときの注意点として、業務命令が出ていなかったとしても、その研修に参加しなければ、実際に業務を行うことができないものや、出欠を取るなどして事実上、参加が強制されていると判断されるものは労働時間に該当します。
研修を行う際には、事前に、研修の目的と労働時間に該当するか否かを明示しておくと、労働者にとって分かりやすく、トラブルの防止にもつながります。また、終業時刻後に研修を行う場合は、研修を始める時点で業務が終了していることを確認し、業務との区切を設けたうえで研修を始めるとよいでしょう。そのほか、通常の勤務場所とは異なる場所や、勤務でないことが外形的に明確に見分けられる服装で研修を行うことも、業務との区切を明確にすることにつながります。
研修以外にも、労働時間に該当するか否か判断に困るケースとして、出社時の混雑や渋滞を回避するた め等に、労働者が自発的に始業時刻よりも前に会社に到着しているようなケースがあります。これについては、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示を受けていないような場合は労働時間に該当しません。この機会に適正な取扱いができているか確認しましょう。
10月になってようやく涼しく、過ごしやすくなってきたと感じていたら、もう今年も2か月を切りました。年々、時が過ぎるのがとても早く感じます。この時期から年末年始までは、「年末調整」業務で事務所も忙しくなります。昨年より「SmartHR」を導入いただいたお客様にはスマホから簡単に年末調整ができるシステムを体験していただき、お客様と弊所と両方にとって年末調整業務を省力化することができました。今年は「SmartHR」と新たに「オフィスステーション年末調整」をお選びいただけるように準備を整え、さらに多くのお客様にご利用いただき、年末調整業務の省力化に貢献していきたいと思っております。(オフィスステーション年末調整では、キャンペーンも実施しておりますので同封のチラシをご覧ください。)
最近は、「DX」といってシステムを導入すれば業務効率化できると思っておられる方も多いのですが、システムを使用するのは人間ですので、導入さえすればそれで問題が解決するというわけでもありません。DXの手始めとして、年末調整業務の効率化から始めるのは、とても導入しやすい上、効果がはっきりするのでお勧めです。ご興味がございましたら、お問合せいただければ幸いです。
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