事務所便り

令和5年10月号

有期契約労働者を雇用する際の注意点

 期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、契約更新を繰り返し、一定期間雇用をしていたにも関わらず、突然、契約更新をせずに期間満了をもって退職させるなどして、トラブルになることが少なくありません。以下では、有期契約労働者を雇用する際の注意点をとり上げます。

■ 契約締結時の労働条件の明示

 有期契約労働者と労働契約を締結する際には、労働契約期間とあわせて、契約更新の有無と更新する際の判断基準を明示する必要があります。更新の判断基準については、例えば以下のようなものが挙げられます。
    • 契約期間満了時の業務量により判断する
    • 労働者の勤務成績、態度により判断する
    • 労働者の能力により判断する
    • 会社の経営状況により判断する
    • 従事している業務の進捗状況により判断する
 労働条件通知書が実態とあった内容となっているかを確認し、必要に応じ見直しをしましょう。

■ 雇止めにおける手続き

 労働契約を更新してきた有期契約労働者を、 現在の労働契約をもって更新せずに終了する「雇止め」を行う場合には、契約期間が満了する少なくとも30日前までに伝える必要があります(雇止めの予告)。この雇止め予告の対象は、以下のいずれかに該当する人です。
    ① 有期労働契約を3 回以上更新している人
    ② 1 年以下の契約期間の労働契約を更新し、 1年を超えて雇用している人
    ③ 最初から1年を超える契約期間の労働契約 を締結している人
 なお、現在の労働契約をもって契約更新をしない旨が明示されている場合は、この雇止め予告を行う必要はありません。

■ 雇止めに係る証明

 雇止めの予告をした後に、有期契約労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合、会社は遅滞なくこの証明書を交付する必要があります(雇止めの理由の明示)。また、雇止めの後についても、有期契約労働者から請求があれば証明書の交付が必要です。明示する雇止めの理由は、契約期間の満了とは別の具体的な理由とすることが必要です。例えば以下のようなものが挙げられます。
   • 前回の契約更新時に、 本契約を更新しないことが合意されていたため
   • 契約締結当初から、 更新回数の上限を設けており、本契約はその上限に係るものであるため
   • 担当していた業務が終了・中止したため• 事業縮小のため
   • 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
   • 職務命令に対する違反行為を行ったため
 雇止めに関するトラブルを防ぐために、労働条件通知書に契約更新の判断基準を明示することと併せて、雇入れ時や契約更新時に、会社から有期契約労働者に対して、どのような契約内容かを分かりやすく説明しておくことが望まれます。

令和6年度入所分の就労証明書について

■ 「就労証明書」とは?

 認可保育所等の入所を申し込む際に保護者が市区町村に提出する書類で、企業で働いている人が申し込む場合、企業の人事担当者が作成します。
 これまで、市区町村ごとに異なるフォーマットが使用されていたため、書類作成が担当者の負担となっていました。

■ 「ローカルルール」をなくして様式を統一

 そこで、「規制改革実施計画」(令和5年6月16日閣議決定)にて、様式を統一し雇用主が就労証明書を地方公共団体にオンラインで提出することも選択できることが可能となるよう、システムを構築するとの方針が示されました。
 令和5年5月29日には事務連絡「就労証明書の標準的な様式について(周知)」が発出され、令和6年4月入所分に係る就労証明書の標準的な様式が示されていました。

■ 令和6年度入所分の雇用主によるオンライン提出は見送り

 9月1日、事務連絡「令和6年度入所分の就労証明書提出について」が発出され、雇用主によるオンライン提出方式には対応せず、申請者が入所申請を行う際に就労証明書を添付する従来どおりの提出方式を継続することが明らかになりました。
 オンライン提出方式への対応が見送られた理由は、企業の担当者と市区長との双方に事務負担が生じることなどを総合的に勘案した結果とされ、今後、より負担軽減となる提出方式が実現できるよう引き続き検討するとされています。

■ 9月15日より新様式が利用可能

 令和6年度入所分の就労証明書については、マイナポータルの「ぴったりサービス」に9月14日に標準的な様式が掲載され、9月15日より利用可能となっております。

弊所よりひと言

 政府は、人手不足への対応が急務となる中で、短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援するため、当面の対応として下記施策に取り組むこととし、9月末に概要を発表しております。
 ①年収106万円以上となることで厚生年金・健康保険に加入するため、保険料負担を避け、就業調整してしまう人への対応
  ⇒健康保険・厚生年金の加入に併せて、手取り収入を減らさない取組(手当の支給、賃金の増額等)を実施する企業に対し、労働者1人当たり最大50万円を支援する。
 ②年収130万円以上となることで、国民年金・国民健康保険に加入するため、保険料負担を避け、就業調整してしまう人への対応
  ⇒繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き被扶養者認定が可能となる。
 また詳細が発表されましたら、ニュース等で発信させていただきます。

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