自宅の玄関先で転んだら通勤災害にあたる? ~通勤災害の豆知識~
会社への通勤中に転んでしまって怪我をしたら労災を使えるというのは、聞いたことがある方も多いと思います。
しかし、通勤の途中に怪我をしても必ず労災として認められるわけではありません。
例えば、会社へ行こうとする際に、自宅の玄関先で転んで怪我をした場合どうなるでしょうか?
労災の通勤災害と認められるには、怪我をした場所が自宅と会社の通勤経路の途中であることが要件となります。
自宅の玄関先は通勤経路になるのか、下記のケースごとに説明いたします。
■自宅が一軒家の場合
一戸建ての住宅については、敷地内に入る地点が住居と通勤との境界となります。
したがって、玄関を出ても庭の門戸を出るまでの自宅の敷地内であれば通勤経路の途中とは認められません。
したがって、玄関先の石段で転倒して怪我をしたとしても通勤災害にはなりません。
あくまでも、不特定多数の人が通るような通路でないと通勤経路とはみなされないことになります。
■自宅がアパート、マンションの場合
一方、アパートやマンションについては、自室の外戸が住居と通勤経路との境界となるので、玄関を出ればすでに通勤経路となります。
例えば、玄関を出てすぐのアパートの廊下や階段で転んだ場合は、通勤経路の途中と認められるため通勤災害となります。
建物内での災害ですが、共有の通路は、不特定多数の人が通るため、通勤経路と認められています。
⇒ ポイントは怪我をした場所が、不特定多数の人が通行する共用の場所か否かです。
では、次のケースはどうでしょうか?
■オフィスビルの玄関で転んだ場合は通勤災害か業務災害か
通勤時にオフィスビルの共用部分(玄関、階段、エレベーターなど)で災害があった場合にも上記と同様の考え方をします。
オフィスビルの場合は、共通の玄関口の内側までは、不特定多数の人が通行を予定しているものではないので、事業主の施設管理下の災害として業務災害となります。
しかし、これがショッピングモールなどの複合商業施設に会社がテナントとして入っており、通常の買い物客も往来するショッピングモール内を通行中に転んで負傷した場合であれば、通勤災害とされる可能性が生じます。
いかがでしたでしょうか。労災の判断はなかなか複雑で、奥が深いと実務を通じながら日々感じております。
今回は、災害の「場所」に注目してみましたが、災害の「原因」や「状況」といった他の要素も判断の材料になりますので、またいろいろな事例でご紹介をさせていただければと思います。
松本 哲弥
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