日本の最低賃金って安い?高い?
すでにご存じの方も多いかと思いますが、今年の最低賃金は10月より28円が引き上げられ全国の平均額は930円となります。
※各引上げの時期、地域の詳細は下記参照ください。【厚生労働省HPより 令和3年度地域別最低賃金額答申状況】
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000662334.pdf
ちなみに昨年はコロナの影響もあり、ほぼ据え置きでした。
ただこれだけ毎年毎年引き上げられるともちろん死活問題だと思います。
また例えば東京の中心地と東京都である伊豆諸島でも最低賃金は同じです。
同一の都道府県内での経済状況の差はありますが「最低賃金は都道府県別で統一」ということに変わりありません。
そんなクライアントのお悩みも聞いている私にとっては地域の分け方も大きな問題だと思うのですが。
ちなみに世界の最低賃金は特に先進国では全国一律制度がほとんどです。
そんな日本の最低賃金についてあらためて考えてみました。
■日本の最低賃金は20年前と比べて
5年前、10年前、20年前と比べてどうなのか。
5年前(平成28年)は823円
10年前(平成23年)は737円
20年前(平成13年)は664円
(※すべて全国平均)
ということは20年前と比べて最低賃金は約1.4倍となります。
20年前といえば私自身が社会人となった頃です。
たしかに地元京都で過ごした学生時代アルバイトの時給は700円や750円だったような気がします。
そう思うと今の学生はうらやましいような気もします。
もちろんコロナ過でかなり状況は変わってしまいましたので大変な状況をよく耳にするようになりましたが・・。
では日本の収入も比例して上昇してきたかと思いきやまったく上がっていません。
20年前の平均給与は国税庁の「民間給与実態統計調査」によるとほとんど変わっていないのです。
この矛盾が生まれるのはなぜか・・
少子高齢化など要因は様々かと思いますがこの20年で労働者の雇用形態のバランスが変わってきたことが大きな要因のひとつではないでしょうか。
つまりいわゆる「非正規」と呼ばれる労働者の割合が増えてきたということです。
当時の小泉政権下の労働者派遣法改正による規制緩和などにより企業は賃金の低い労働者を雇いやすくなったということです。
(例えばそれまで工場などの単純作業の派遣は認められていませんでした。)
もちろん、企業にとってはメリットも大きかったのですが副反応の影響は今日までつづいてしまっているのも実際のところだと感じます。
ここ最近、非正規の割合を減らしていこうと派遣法が厳しくなったり、助成金をつくったりして国も対策を打っているのですがあまり効果が出ていないような気もします。
加えて物価も20年前とくらべてほとんど変わっていない状況です。
状況は変わらず最低賃金だけが250円以上上昇するとなると日本経済の危うさをなんとなく感じることができます。
では日本の時給は高いのでしょうか。
海外に目を向けてみます。
■海外の最低賃金は?
少し前、アメリカの通販大手Amazonが平均時給およそ2000円(18ドル)で新たに12万5000人を雇用することを発表しました。
現在のアメリカの平均時給は1800円(16ドル)程度となります。
倍とはいかないものの日本の差は歴然です。
例えばアメリカでマクドナルドのビックマックを食べようと思うと620円程だそうです。
日本では現在390円です。
不動産が安いわけでもなく、材料もけっして安いことはありません。
ではどうしてそれだけの差が生まれるかというと
「人件費」の安さが最後に要因として残ります。
ただアメリカでは平均の賃金額も20年前と比べると115%程度伸びています(OECDのデータによると)
その他の先進諸外国も同様の傾向で日本だけが取り残されるという妙な結果となってしまっていることにあらためて気づかされます。
■どちらにしても今はどこも人材不足
先ほどのAmazonの件からもわかるように今はどこも人材不足です。。
どうすればひとが集まってくれるか頭を悩まされているのは大きな企業も小さな会社も同じです。
最近は「賃金以外の価値」も大きな意味をもつ認識が広まってきたこともたしかです。
ただ何と言っても「賃金」の要素は大きいものとなります。
雇用する中で最も基本となる「賃金」を同業種同職種の水準より高く設定することはよりよい人材を確保するために重要です。
「労働者をできるだけ安く」という考え方では結果として大きな損失をだす要因となってしまうのではないでしょうか。
今年、日産が契約社員約800人を正社員にとの報道もありました。
少しずつ雇用の価値観は変わってきているのかもしれません。
とはいいつつ、人件費をどう縮小するかは多くの中小企業にとっては重要課題です。
日本のすばらしいサービスや質の高い商品や製品を当たり前のように安く享受できていることにあらためて気づかされました。
ぜひ、社会全体を押し上げていく方向にいけるよう企業価値を高めていくために少しでもお手伝いできればと思う今日このごろです。
私も小さな心がけとして「当たり前ではない」サービスに対して店員さんに「ありがとうございます」と感謝を伝えるようにしています。
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