「日本でいちばん大切にしたい会社」
何年か前、たまたま著者の講演を聞いたことがきっかけで読んだ本のタイトルです。この仕事をしていくなかで今でもたまに読み返しているのですが少しご紹介させていただきます。強い共感と逆に綺麗ごとだけではうまくいかないことのほうが多いと複雑な心境になる一冊です。著者の坂本光司氏は法政大学大学院教授であり、経営学者です。(学者であり経営者ではありません。そこに少し違和感を覚えるのかもしれません。)6000社を超える中小企業の訪問調査を行い「正しい企業経営とは何か」を考え、そして自分が思う「いい会社とは?」との問いの答えがシンプルです。
「会社経営とは『5人に対する使命と責任』を果たすための活動である」
① 社員とその家族を幸せにする
② 外注先・下請企業の社員を幸せにする
③ 顧客を幸せにする
④ 地域社会を幸せにし、活性化させる
⑤ 自然に生まれる株主の幸せ
『会社は顧客のためのものでも、まして株主のためのものでもない。社員が喜びを感じ、幸福になれて初めて顧客に喜びを提供することができる。 顧客に喜びを提供できて初めて収益が上がり、株主を幸福にすることができる。 だから株主の幸せは目的ではなく結果である。』
裏を返せばそこで働くひとたちもその信念に応える責任があることも意味しているように思います。
もちろん業績をあげてこそこういった理想論を唱えられるという意見もあるかと思います。お客様は神様、会社は株主のもの等という考え方のほうが一般的であり、それが間違いだとも思いません。またいわゆるモンスター社員が起こすトラブルの対応に苦慮している会社も増えています。
ただ、上記の信念を徹底して業績を伸ばしている会社が存在することも確かです。
そのひとつに「日本理化学工業」という会社があります。(この会社を紹介したいがためにこの本を書いたそうです。)ご存じの方もおられるかと思いますがこの会社は従業員80名のうち約7割がなにかしらの障害をお持ちの方です。主にチョークを作っており、業界トップクラスを誇ります。しかも何年も連続で増収増益を続けてきました。
そんな会社が障害者を雇うようになった次のようなきっかけがあったそうです。
約50年前、ある障害をもった2名の女の子が職場体験にやってきました。まわりのフォローによりなんとか仕事をこなしたそうです。最後の日に社員全員が集まって社長に訴えました。「どうかあの子をウチで働かせてあげてください!足りない部分は私たち全員でフォローしますから!」そう懇願したそうです。しかし悩んだ社長はある住職に相談をしました。
そうすると、「幸せ」とは、
①人に愛され
②人の役に立ち
③人に必要とされ
④人に感謝されることである。
しかし、②、③、④は仕事をすることでのみ得られる幸せである。そう告げられ、社長は、「はたらく」喜び・幸せを彼らに知ってもらいたいと考え、採用を決めたそうです。いつしか経営者として「人に幸せを提供できるのは、福祉施設ではなく企業なのだ」という信念を持つようになったそうです。
ちなみに坂本氏がこの会社を訪問した際、お茶を入れてくれた高齢の女性がその当時初めて採用されたその身障者の女の子だったと聞き、その場で泣いてしまったそうです。
いい会社の定義はそれぞれ意見があるかと思います。(もちろん儲かっているにこしたことはありませんが・・)ただ会社の色は良くも悪くも経営者の考え方で決まるのではないかと感じます。経営者が不正などに甘ければそれは会社の体質となり、受け継がれます。最近の不正、改ざんのニュースを見ると特に感じます。
私がまだ働きはじめの20代初めのころ配属になった部署のある上司に言われました。
「この先もし取引業者からなにか見返りとして金品を受け取るようなことがあれば即刻会社を辞めてもらいます。」
まだまだ仕事も覚えていない新人に対して、まず伝えるべき教えが「誠実に働け」ということでした。会社の姿勢、働くことに対する姿勢はいいことも悪いことも上から下に受け継がれていくものです。
まずはこんな考え方もあるのかというくらいの軽い気持ちでもこの本をご一読してみてはどうでしょうか。もしかしたら考え方が変わるかもしれません。
社会保険労務士 岡本 芳幸
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