コラム

Column

2017.10.31

医師の残業代は必要か??

今年6月に、医師の残業代をめぐって興味深い最高裁判決が下されました。
ある私立病院に勤務していた勤務医の高額な年俸(1700万円)に対して残業代が含まれていたかどうかが争われました。

■高額年俸者の残業代は・・・
高額年俸者の残業代請求事件としてはモルガンスタンレー証券事件(東京地裁平成17年10月19日)が有名です。このときは労働者側の主張は認められませんでした。
いわゆる定額残業を肯定する要件のひとつに「割増賃金とほかの賃金が明確に分かれていること」が挙げられます。ただこの裁判では
①給与の算定方法が労働時間ではなく会社にどれくらい営業利益をもたらしかによって決まっていたこと
②労働者の裁量で働いており時間管理は難しかったこと
③労働者本人が割増賃金が支給されると考えていなかったこと
④高額な報酬を受け取っていたこと

特に④の高額な報酬(年収2,200万円)が影響したと思われます。東京地裁は常識的に報酬に割増分も含まれているとの判断を下したということになります。

■原点に戻って
ではこの裁判の結果はどうなったのかというと上記の裁判例とは異なり会社側の主張は認められませんでした。つまり「時間外の割増賃金は他の賃金と明確に判別できなければならない」という原点に戻って例外は認めないとの判断を下したことになります。

■今後の影響について
高額年俸者であっても給与体系の運用を間違うと高額な未払賃金が発生しうることになります。特に医療業界、金融業界等長時間労働が常態化している高額年俸者を抱える企業にとって今後大きく影響を与えるでしょう

■高度プロフェッショナル制度について
現在、政府が成立をめざしているこの制度は一定の研究開発や金融・コンサルタントといった高度な専門的知識を必要とする業務に就き年収1075万円以上の労働者が対象として成果のみで給与額を決定できるいうものです。今のところ医療業界は想定外のようですが業務の範囲の拡大、対象年収の引き下げ等の可能性もありますので動向を注目していくことも必要でしょう。

■最後に・・
業界のルールは通用しないという認識を今まで以上に持ち、施策を講じる必要があるとあらためて感じました。年収数千万円の未払残業代は大企業といえど大きなリスクとなります。ただこの裁判はもともと解雇無効を主張する中での争いでした。通常、高額所得者による未払賃金請求は多くはありません。もしかすると訴えた原告からするとお金の問題ではなかったのかもしれません・・・。労使紛争の多くが感情のもつれから問題が大きくなってしまいます。どのような施策を講じることが有効なのか様々な視点から考えないといけません。
                                       社会保険労務士 岡本 芳幸
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